上野品川歯科・矯正歯科院長の品川淳一です。
前歯の表面に目立つ白斑(ホワイトスポット)があってお悩みの方はいらっしゃいませんか?
子供の頃に出来てそのままになったり、矯正歯科治療を受けたご経験のある方に、このホワイトスポットは出来ることがあります。
歯科医院でも削る必要はないからそのままで良いと言われたり、逆に削って治さないといけないと言われたりした方もいらっしゃるかも知れません。
このホワイトスポット、またその原因は一体何なのでしょう。
実は、これは初期の虫歯の進行が停止したものなのです。(歯が作られる時期にフッ化物を摂取しすぎると発症する、歯のフッ素症でも似たような見た目になります。しかし、水道水や飲食物(ガムを除く)にフッ化物が添加されていない日本では、故意にフッ化物配合歯磨剤や洗口液を8歳まで毎日大量に飲んだりしない限り発症は考えられません。(1))
専門用語では「表層下脱灰」と呼ばれる現象で、表面のエナメル質は残っているにも関わらず内面のエナメル質が溶けて構造が変化し、エナメル質本来の透明感が失われて白濁すると言われています。
虫歯の進行としては停止しているので、治療としては削る必要は全くありません。
しかし、これが目立つ前歯に出来てしまった場合に、見た目を治すには従来はホワイトスポットを削ってダイレクトボンディング(コンポジットレジン修復)を行ったり、エナメル質を一層削ってラミネートベニア修復を行わなければいけませんでした。
ホワイトニングで治せるのでは?と思われる方もいらっしゃるかも知れませんが、実はホワイトスポットにホワイトニングは逆効果です。
むしろ白濁が目立つようになります。元々はホワイトスポットが気になっていなかったのに、ホワイトニングをすると浮き上がるように目立ってきて気になるようになってしまうこともあります。
現在、resin infiltrationという、レジン(樹脂)を浸透させる手法で、このホワイトスポットを全く削らずに、見た目を治すことができるようになりました。見た目だけでなく、削らずにレジンを浸透させる治療は虫歯の進行を止めるのに有効であることも様々な研究でわかっています。(2)
このresin infiltrationという治療に用いるのがicon(アイコン、ドイツDMG社の製品)(3)という低粘度のレジンです。現在、市販されているresin infiltrationの製品はこれだけなので、実質この治療をアイコン治療ということもあります。
表層下脱灰で溶けてしまったエナメル質に浸透し、光の屈折率が周囲と近くなるためホワイトスポットを目立たなくすることができます。
写真はホワイトスポットをこのアイコンで治療した前後の写真です。患者様の同意を得て掲載しております。下が術前、上が術後3ヶ月後です。上の前歯二本を治療しており、1歯3万円と消費税ですので治療費総額は6万円と消費税です。拡大していますので白濁が完全に消えたわけではありませんが、歯の周囲の色と馴染んで目立たなくなっているのがわかると思います。
アイコンを使った治療では完全にはホワイトスポットが消えるわけではないので、白斑部を完全に消したかったり、徹底的に綺麗に治したいのであればラミネートベニア修復を選択した方が良いでしょう。アイコンはレジン(樹脂)の材料なので、経年的に着色する可能性もあります。しかし、人工材料は一生は持たないので、歯を一度削ってしまうと、次にもし虫歯などで再治療が必要になった場合、さらに歯を削ることになってしまいます。そのようなサイクルに入らないために、如何に最初に歯を削る時期を遅らせるかが現代の虫歯治療では重要になっています。
その中で、ホワイトスポットの見た目が気になっている方へのアイコンを用いた治療は、歯を全く削らずに治すことが出来るため、非常に有用であると考えています。
参考文献
1, う蝕予防のための日本人におけるフッ化物摂取基準(案)の作成 フッ化物応用委員会
http://www.kokuhoken.or.jp/jsdh/file/press/2008-58-5.pdf
2, う蝕治療ガイドライン第二版 日本歯科保存学会
http://www.hozon.or.jp/member/publication/guideline/file/guideline_2015.pdf
3, Icon – Caries Infiltrant smooth surface
https://www.dmg-dental.com/en/products/product/icon-caries-infiltrant-smooth-surface/